【ハラスメントに強い社労士が解説】 中小企業のハラスメント事例と対処法

中小企業では、従業員との距離が近いからこそ、ハラスメントへの適切な対応が重要です。ハラスメントを放置することは、企業にとって深刻な影響、特に従業員の離職につながるリスクがあります。

1.ハラスメントが企業に与える影響

ハラスメントを放置すると、従業員のストレスが増加し、生産性が低下するだけでなく、最終的に従業員の離職という形で企業に大きなダメージを与えます。

  • 従業員のストレス増加と生産性低下: 過度な指導・叱責や業務時間外の過度な連絡、個人的な攻撃といったパワーハラスメントは、従業員の精神的な負担を増大させ、業務への集中力やモチベーションを低下させます。これが長期化すると、心身の不調を訴え、休職や退職を選択する従業員が増加する可能性があります。
  • 企業イメージの低下と人材確保の困難: ハラスメント問題が表面化し、従業員が離職に至ると、企業の評判は大きく損なわれます。特に中小企業においては、口コミやSNSなどを通じて情報が広がりやすく、新たな人材の採用が困難になるだけでなく、既存の従業員のエンゲージメント低下にもつながりかねません。

2.中小企業でよくあるパワーハラスメント(パワハラ)事例

中小企業では、経営者と従業員の距離が近いことや、人材が限られていることなどから、以下のようなパワーハラスメントが発生しやすい傾向にあります。

  • 過度な指導・叱責: 「なめてるのか!」「死ぬ気でやれ!」などと大声で怒鳴る、威圧的なメールを送るなどの行為は、従業員を精神的に追い詰め、職場を離れる原因となります。
  • 業務時間外の過度な連絡: 深夜や休日に関わらず頻繁に電話やメールを送り、従業員のプライベートな時間を侵害する行為もパワーハラスメントとみなされ、従業員のワークライフバランスを著しく損ね、離職につながる可能性があります。
  • 個人的な攻撃: 特定の従業員を名指しで批判したり、人格を攻撃するような言動は、従業員の尊厳を傷つけ、職場での居場所を失わせることで、自ら退職を選ばざるを得ない状況に追い込みます。
  • 不合理な要求: 業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことの強制は、従業員に過度な負担を強いることでストレスを増大させ、離職を促す要因となります。

3.中小企業が取るべきハラスメント対策

ハラスメント対策は、自社の社員が「被害者」になることを防止するだけでなく、「加害者」にならないようにすることも重要です。

  • ハラスメント防止対策の策定と周知: 企業としてハラスメント防止対策を策定し、これを従業員に周知することで、ハラスメントが許されない行為であることを明確にします。これにより、従業員が安心して働ける環境を整え、離職のリスクを低減します。
  • 従業員研修: ハラスメント行為を早期に察知し、適切に対処するための教育や報告手順を学ばせることで、いざというときに従業員自身が適切に対応できるようになります。また、自社の従業員が加害者とならないよう、社外での言動についても「人権」を尊重しなければならない旨を研修等で周知啓発を図ることも重要です。
  • 相談窓口の設置: 社内または社外に相談できる窓口を設けることで、ハラスメントの被害者が孤立せず、早期に問題を解決できる機会を提供します。これにより、問題が深刻化する前に対応し、従業員の離職を防ぐことができます。

ハラスメントは人権侵害行為であり、ビジネス上の問題にとどまらず、従業員の人権や企業の信頼性にも大きな影響を及ぼします。企業は、従業員を守るだけでなく、適切なビジネス環境を維持する責任があります。